きみの好きなところを数えたら朝になった。



例えばバカだけど一生懸命なところとか、中学最後の野球の試合なんて男のくせに大泣きして、お前たちと3年間一緒にやれてよかったなんてくさいセリフまで言っちゃって。


私が勝手に西崎と幼なじみをやめて、避けるようになった初日も恥ずかしいぐらい私の名前を連呼しながらついてきた。

『なんで避けんの?俺、なんかした?』って、叱られた子どもみたいな顔してた。


それから諦めたように西崎も私のことを見なくなった。

でも知ってる。


体育祭で使うハチマキがなくなったとき、私の机に何故かポンッと置いてあって西崎が探してくれたこと。

私が思春期でお母さんがいないことを隠していたとき。お母さんの話題になって気まずい私を見かねて『そういえばさー』ってわざとらしく昨日見たテレビの話をするところとか。


卒業アルバムの実行委員に選ばれて、自分の写真より友達や私がいい顔をしてる写真を選んでくれたり。

西崎と同じ高校なんて最悪、と言ってるところを女子たちに聞かれて。すぐに『雨宮さんが言ってたよー。ひどいね』なんて告げ口をされたときも。

『俺がわざと同じ高校選んだんだよ。ざまーみろって言っといて』って笑ってた。


西崎はそういう人だ。

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