きみの好きなところを数えたら朝になった。
「……先輩。私やっぱりダメでした」
自分で決めて、片想いの結末を見届ける決心をした。それは先輩があの時、私の背中を押してくれたからできたこと。
「私……西崎の彼女になりたかったんです。私……っ、西崎の特別になりたかったんです」
叶わないと分かっていても、それでも願った。
誰よりもなによりも大切にする。
なによりも誰よりも好きだから、
私は西崎の隣に並んで、触れ合えて、繋がっていられる、そんなたったひとつしかない椅子がほしかった。
「分かってたんです。最初から。西崎は私を選ばないって」
「………」
「分かってたけど、それでも私は……」
その時ふわりと髪の毛が揺れて、気づくと先輩は私を抱きしめていた。
男の人の力で、苦しいぐらい強くて、先輩の甘くて優しい匂いが私の身体を包みこむ。
「俺にすればいいのに」
先輩が耳元で呟いた。
そしてさらに力強く抱きしめられて、先輩の絞り出すような声が公園に響く。
「俺にしてよ、澪ちゃん」
心が揺れた。
冷たくなっていた身体が一気に先輩の体温で暖かくなって、抱きしめ返そうと伸びた手が寸前で止まる。
そしてその日から、西崎は私の家に帰ってこなかった。