きみの好きなところを数えたら朝になった。


***


それから数日が経って、私の生活は元どおりになった。朝食はふたり分。ガミガミと朝から怒らないようになったし、寝癖直しの減りに心配することはない。


風の噂で西崎は岸田くんの家にいると聞いた。

私と顔を合わせづらいのだろう。正直ホッとしてる。残りわずかとはいえ西崎とこれ以上一緒に生活するのはムリだったから。


「せっちゃん、おはよー」

「おはよう。今日1限目自習だってよ」

「マジで?ラッキー」

せっちゃんにはちゃんと結末を報告した。そしたらなにも言わずに頭を撫でてくれて「また買い物でも行こうよ」と誘ってくれた。

本当にせっちゃんと友達になれて良かったって思う。


「そういえば昨日うちのネコがさー」

せっちゃんと西崎の話をしなくなった。

それも前と元どおり。せっちゃんが飼っている三毛猫の可愛い写メを見ながら和んでいると突然……。



「ねえ、西崎と彼女と別れたらしいよ」

クラスメイトのひとりがそう言った。

知らなかった人は「嘘、なんで?」と興味津々に食いついて、知っていた人は持っている情報を自慢気に話す。

狭い教室では耳を塞いでない限り筒抜けで、その情報は私の耳にも自然に入ってきてしまう。


「なんか西崎がフラれたらしいよ。彼女にはもう新しい人がいるって噂だし」

「マジで。西崎捨てられちゃったんだ」

「んーそうなんじゃない?だから最近大人しいっていうか中庭で全然騒いでないんだ」


気にしないようにしていても胸がざわざわとしてしまう。
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