きみの好きなところを数えたら朝になった。
噂はどうやら事実のようだった。
せっちゃんは「マジでバカだね」とぽつりと呟いたけど、それ以上西崎の話を私の前で広げることはなかった。
……西崎が別れた。
その言葉だけがグルグルと頭を駆け巡る。
どうにかしようなんて思ってない。私の片想いはすでに終わったのだ。
西崎が別れたことは私には全然関係ないこと。それなのに学校にいればその話題で持ちきりで、なかなか気持ちを切り離すことができない。
教室の噂話から逃れるように私は食堂へと向かって、その入り口にある自動販売機で冷たいお茶を買った。
ひと口飲んで、ふと目線をズラしたら誰かと目が合った。
ぺこりと頭を下げられて、その人も私と同じお茶を買う。
「こうして会うのは〝あの廊下〟以来ですね」
それはふわふわした髪の毛を右耳の横で束ねて、引き寄せられるようないい匂いを漂わせている桃香ちゃんだった。