きみの好きなところを数えたら朝になった。
「桃香ちゃんにとって西崎は物足りない存在だったかもしれないけど、桃香ちゃんの本性を知ってもそれでもいいって言ってた西崎の気持ちぐらいは受け取ってあげてよ」
失恋した気持ちは今私が一番わかる。
「本当、バカですよね」
「うん。私もそう思う」
その真っ直ぐさが時に自分自身を苦しめる。それは本人も自覚してると思うけど、それを曲げることができない不器用さも西崎の良いところのひとつだと思うから。
「でもいつかそんなバカな人が良かったって西崎を振ったことを後悔する日がくるかもしれないよ」
あんなバカは他にいない。
なんでも一生懸命で、一途で愛情深い。そんな人はなかなか探しても見つからないだろう。
「でも返してほしいって言いにきてもダメだからね」
西崎には幸せになってもらう。
それが私を選ばなかった西崎の責任だ。
「はは、私から見れば雨宮先輩もバカですけどね」
「え?」
「それじゃ、失礼します」
桃香ちゃんはそう言ったあと、礼儀正しいお辞儀をして歩き去って行った。