きみの好きなところを数えたら朝になった。
気持ちが切り替わらないまま1日を過ごして、
気づけばあっという間に放課後になってた。
部活に向かう生徒たちがドタドタと廊下を歩き去って、中庭では園芸部のおじいちゃん先生(前田先生)が花壇の前で花が盗まれたと騒いでいた。
私はそのまま正門を抜けて、早歩きで家へと帰る。
その途中でザッザッと行儀の悪い音が耳に聞こえてきて、私が振り返る前に「雨宮!」と西崎はでかい声で私を呼んだ。
ムッとした表情で西崎を睨んで、私はまたため息。
西崎と私の間に規約のようなものは存在してない。だから幼なじみだったことは内緒にしようね、なんて可愛い約束はしてないけど、そこは暗黙の了解として西崎も空気を読んでいた。
なのに、ちょっと昨日からだいぶ緩んでいるいうか。周りに人がいないからいいけど、これが学校だったら確実にキレてた。
「なにか用ですか?」
あと数メートルで私の家だし、その先に西崎が立ち寄りそうな場所も友達の家だってないはずなのになんでここにいるのって感じ。
「人をストーカーみたいな目で見んなよ」
西崎はそう言ってポリポリと頭を掻きながら私に近づいてきた。