きみの好きなところを数えたら朝になった。
西崎は学校で普通だった。
周りにいる友達も別に気を遣うわけでもなく励ますわけでもなく普通どおりバカ騒ぎをしてただけ。
ああ見えて西崎は人気者だから、今日はきっと芸能人のように西崎の周りに人が集まるだろうと想像してた。
でもそれがなかったから、言ってないんだって。
家が火事になったとか、住むところを探してるとか。カッコつけてるのか心配されたくないのかは知らないけど、そういえば昔から肝心なことは隠したがるヤツだった。
どうでもいいことはペチャクチャ喋るくせに。
どうせ今日だって泊まるところに困ってるんでしょ。知らないよ、そんなの私は。
その内西崎は荷物をまとめて、また1階におりてきた。
麦茶ぐらいあげてもいいと思ってたのに、さっさと帰ってという私の言葉に従って西崎は裏返しになった靴を足先で直して履く。
その後ろ姿はやっぱり他人で、こんな大きい西崎の背中なんて私が知ってた西崎じゃない。
「じゃあな雨宮。昨日は本当に助かった。おじさんにもよろしく言っといて」
昨日はあんなに図々しかったのに帰る時は意外に淡白で、西崎が玄関のドアノブに手をかける。