きみの好きなところを数えたら朝になった。


西崎に提示した我が家のルールはいくつもある。

靴は揃えて家に入ること。
廊下をドタドタ歩かないこと。
食べた食器は自分で洗うこと。
お風呂は私より後に入ること。
使ってないコンセントは抜くこと。
部屋の掃除は一週間に一度すること。

まだ守ってほしいことがいくつもあるのに、西崎はなにひとつ守ってくれない。

むしろ私の話を聞き流しているんだと思う。そこが本当にムカつく。


「マジお前のせいで引っ込んだ」

西崎は家を出てからブツブツと文句を言っていた。

「なにが?」

「俺が学校で腹痛くなったらお前のせいだからな」

「知らないよ、そんなの」

文句を言いたいのは私のほうだ。結局髪の毛を触る時間はなかったし、何故か西崎の髪の毛は整っていてふわりとシトラスの香りがする。


「ってか次に私の寝癖直し使ったらマジで許さないから」

それいくらするやつだと思ってんの。私的にはかなり奮発して買った高い寝癖直しなのに。


「いや、お前が寝癖ヤバくて引くって言ったんだろ」

だって洗面所で会った時の西崎は寝てる間に台風でも直撃したのってぐらいひどくて、普通にそれで学校に行こうとしてたから人として止めてあげただけ。

誰も私の寝癖直しで直せとは言ってないし、むしろ西崎なんて水で十分だ。


「「……はあ」」

と、お互いに同じタイミングでため息をつく。


こんなので西崎との生活がやっていけるんだろうか。この先、不安しかない。
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