きみの好きなところを数えたら朝になった。


なんで今せっちゃんの口から須藤先輩の名前が出たのかがよく分からない。


須藤尚人先輩はひとつ上で、私のスマホに入ってる貴重な男の人のひとり。元サッカー部のエースで夏の大会を最後に今は引退してしまったけど今でも後輩のためにグラウンドに顔を出す優しい人。


「先輩とこの前、映画に行ったでしょ?」

「うん、行ったよ?」

「今日一緒に帰る約束してるんでしょ?」

「うん。先輩が参考書買いたいって」

淡々と答える私を見てせっちゃんが呆れた顔をしていた。その間にも中庭で騒ぐ西崎の声が聞こえてきて、友達に髪の毛の匂いを突っ込まれていた。

あたふたする西崎の髪に気持ち悪いほど男たちが群がっていて、めっちゃ匂いを嗅がれている。

そういえばモテ髪間違いなしって寝癖直しに書いてあったっけ。別にそれに惹かれて買ったわけじゃないんだけどさ。


「あのさ、先輩が澪のこと好きだって気づいてないの?」

「……え……ええ!?」

思わず外に聞こえる声で絶叫してしまった。
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