きみの好きなところを数えたら朝になった。
まるでパアッと花が咲いたように周りが明るくなって、タッタッと可愛らしい小走りで西崎に駆け寄る。
「……あれ?あの子って……」
今私が口に出そうとしていた言葉を須藤先輩が言った。いつの間にか先輩とせっちゃんも覗くように窓の外を見ている。
「し、知り合いですか?」
「ううん全然。ただ周りが確か騒いでた。1年生にすごい〝美少女〟がいるって」
そう、今私の目に映ってる女の子は昨日廊下でぶつかってしまった子。近くで見ても衝撃的だったけど遠目から見ても本当にふわふわで可愛い。
……これは男子たちが騒ぐのもムリはない。
それにしてもちょっと気になるのが西崎とものすごく親しげに喋っていること。先輩ってキャラでもないくせに「柊也先輩」なんて呼ばれてるし、ボディタッチもけっこう激しい。
あんな美少女と知り合うなんてどんなコミュニティツールを持ってるんだろうか。それも西崎の人柄だったりするのかな。
「あれって彼氏でしょ?」
「え?」
思わずすぐに聞き返してしまった。
彼氏って?だれが?だれの?
「だから隣にいる澪ちゃんと同級生の人。名前は知らないけど『桃香ちゃんが取られた』って俺の友達が泣いてたから」
隣にいる同級生の人?桃香ちゃん?
私は確認するようにもう一度中庭を見て、美少女の隣にいるのは西崎で、しかも西崎は女の子のことを愛しそうに〝桃香〟と呼んでいた。