きみの好きなところを数えたら朝になった。
「でさ、居候のこと桃香に言っていい?」
西崎が言う〝桃香〟は本当に心地いいほど響きが良くて、私の〝雨宮〟よりずっと何回も呼んでるんだなって感じ。
「うん。いいよ。ってか彼女には言わなきゃダメでしょ」
隠してヘンな誤解をされたら困るし。
「そう言ってもらえて助かる。ちょっと今から電話して言うわ」
西崎はそう言ってリビングの窓を開けて庭に出た。虫が入らないように網戸だけを閉めて、その向こう側にうっすらとスマホの明かりが見える。
電話で桃香ちゃんになんて説明したか知らないけど、穏やかな口調で喋ってるから喧嘩にはなってないみたい。
そして電話をしてる西崎の顔は見てられないくらい嬉しそうな顔をしてた。
ああ、そういえば西崎って好きな子の前では特別に接し方が変わるヤツだったっけ。
だから西崎の好きな人はすぐ分かる。優しくしたり、気遣ったり、目で追ったり、本当に分かりやすい。