きみの好きなところを数えたら朝になった。


学校で桃香ちゃんのことを意識したことはなかったけど、西崎の彼女と分かった途端にやたらと目に入る。

教室移動の時にすれ違ったり、渡り廊下で見かけたり、自販機の前で鉢合わせしたり。

向こうは廊下でぶつかった程度じゃ私のことなんて覚えてないけど、後輩なのにキラキラと眩しすぎてつい二度見してしまう。


……西崎の彼女。彼女、ね。

私なんて平凡な毎日を送ってるだけなのに、あの桃香ちゃんを彼女にするなんて、なんだか西崎がワンランク上の世界に行ってしまったような気分がするのは気のせい?


「だから澪も須藤先輩と付き合えばいいんだよ」

声に出してたつもりはないのに、せっちゃんに宥められてるってことは恐らく口に出ていたんだろう。


「いや、先輩とはそんな関係じゃないって」

せっちゃんはことあるごとに私と先輩をくっ付けようとしてくるけど。


「だって先輩と今一番仲がいい女子って澪じゃん。もしタイミングが合うとしたら今しかないよ。あとでやっぱり先輩と付き合っとけば良かったって後悔するのイヤじゃない?」

つまり大きな魚は今のうちに網に入れておけと?


「先輩が私を好きだとは限らないでしょ」

「私から見れば100パーセント確実だと思うよ」

「だとしても私が……」

「え?澪まさか好きな人いるの?」

「……いないけど、さ」

ちょっと自分でも歯切れが悪かった。

好きな人がいなくても、じゃあ先輩とって考えは私にはムリかも。そんな話をしていると、どこかで見ていたように先輩からのラインが。


【今日一緒に帰らない?】
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