きみの好きなところを数えたら朝になった。
ゲームセンターの中に入ると騒がしいゲーム機の音が響いていて1階はクレーンゲーム、2階にはメダルゲームが設置されていた。
「澪ちゃん、なにか欲しいのある?」
「取れるんですか?」
「実は苦手なんだけど澪ちゃんのために頑張るよ」
「はは、じゃあ……」
たくさんあるクレーンゲームの景品を見ながら、デカクレと呼ばれる3つの爪のようなアームがある機械の前で私は止まった。
そこには白くて触り心地が良さそうな抱き枕がひとつ。
しかもウサギの顔がついていて、つぶらな瞳と完全に目が合っている。
……これはあれだ。ペットショップで〝私を飼って〟と言ってるかのような離れがたい気持ちに似てる。
「これがいいの?」
そこへ須藤先輩がやって来た。
「で、でも……」
可愛いし一緒に寝れたら最高だけど、抱き枕だから引っ掛かる部分も上手く挟める箇所もないから難易度は高めだ。
「ちょっとやってみるよ」
そう言って先輩はチャレンジしてくれたけど、案の定ウサギの抱き枕はアームをすり抜けていく。
「けっこう重そうだね。アームの力は弱くなさそうだけど」
「たぶん低反発の綿が入ってるんだと思います。持ち上がっても出口まで運ぶのは……」
「うーん、もう1回やってみるよ」
先輩はまたお金を入れてチャレンジしてくれたけど、やっぱり重たくてすぐにアームから落ちてしまう。
「せ、先輩大丈夫です!取りやすそうなのが向こうに……」
そう言っても先輩は諦めずに何回もやってくれている。
なんだかものすごく申し訳ない気持ちになってきた。