きみの好きなところを数えたら朝になった。


もっと手軽で小さなものをお願いすれば良かった。私はキョロキョロと周りを見渡して「あれがいいです!」と子ども向けの小さなクレーンゲームを指さそうとした時……。


「あ……」

雑音に混じって聞こえた声。

目が合って数秒。そこには何故か西崎の姿。お互いにフリーズしてしまって時間が止まる中で、通路から西崎に向かって駆け寄ってきたのは桃香ちゃんだった。


「柊也せんぱーい!あっちに可愛いストラップがありましたよ!」

ふわふわの髪の毛を揺らしながらギュッと西崎の腕を掴む。


「え、ああ、うん」

それに返事はしたものの、西崎もまさかここで私に会うとは思ってなかったらしく動揺が顔に出ていた。


……そういえば西崎は彼女とデートだったっけ。完全に誤算だった。デートと言えば近場のゲームセンターは外せないし、しかも学校帰りに立ち寄れる穴場。

考えれば西崎と鉢合わせすることは予測できたはずなのに、そこまで頭が回らなかった。
< 54 / 170 >

この作品をシェア

pagetop