きみの好きなところを数えたら朝になった。
「仲いいの?西崎だっけ?」
「仲はよくないです!むしろ私は迷惑してるぐらいで……」
思わず全力で否定してしまった。なんだか逆に言い訳をしてるみたいで空気がどんよりと重たい。
……こんなに私の家まで遠かったっけ。気分的に前に進んでる気がしない。
そんな私の顔を見て先輩が歩く足を止めた。
「ごめんね。責めてるわけじゃないんだ。ただちょっと余裕がなくなったっていうか……」
いつも大人っぽい先輩がムスッとしている。こんな顔を見たのは初めてで数秒だけ目が離せなくなった。
すると私の右手に温かい感触が伝わってきて、気づけば先輩は私の手を握っていた。
ドクンドクンと、どっちの心臓がうるさいのか分からない。
先輩の手は大きくてゴツゴツしてて、本当に男の子の手って感じ。だから余計に胸がソワソワする。
「澪ちゃん」
いつもよりも低い声。
先輩はギュッと私の手を握りながら静かに。でもしっかりと私の耳に届くように。
「俺たち、付き合わない?」