きみの好きなところを数えたら朝になった。
***
「かんぱーい!」
目の前でカンッと清々しいほどの接触音が鳴る。私は注がれたオレンジジュースをひと口飲んで、アルコールでも入ってるのかなってぐらい状況が理解できない。
お父さんはお酒が弱いくせにすでに缶ビールを2本も空けていて、すでに顔はリンゴのように真っ赤っか。
「いやあ、柊也(しゅうや)くん大きくなったね。
前にうちに来た時はあんなに小さかったのに」
「はは、まあ10年も経てば」
「みんなは元気?満里子さんと康平さんと、あとなんだっけ?犬のペロ!」
「いや、チロっすね。もう5年前に老衰しました」
「そっかあ。マンションも買ってまだ3年足らずでしょ?康平さんの涙が目に浮かぶなあ。労災はおりるの?」
「ああ、そこら辺は問題ないみたいですよ。隣人の火の不始末が原因だったし、改装工事もうちは一銭も……」
「それなら良かったね。うん?良くはないけど、とりあえず誰もケガしなかったからそれがなによりだよね」
「はい」
「じゃあ、柊也くん。もっと飲んで……」
「ちょっと!!」
和やかな空気の中で勢いよく私は椅子から立ち上がった。西崎のコップに注いでいるオレンジジュースが溢れる寸前でお父さんが「おっと」とペットボトルを上げる。