きみの好きなところを数えたら朝になった。
そのあとなんとか支度を終えて時間どおりに家を出ることができた。
それにしても〝私らしくない〟ことをしてしまった。一応西崎の前ではしっかり者のポジションにいるのに。
「ふ、はは。ヤバ。思い出してきた」
「なにが?」
「お前のさっきの格好。じわじわくるわ。アレ」
どうやら私のボタン事件を思い出してるらしい。……西崎に笑われると本当に腹がたつ。
「そういえば昨日ゲーセンで俺のことシカトしなかったな」
笑っていた呼吸を整えて西崎が言う。
「は?なに、今さら?」
笑われたことを根に持ってる私はいつもより早歩きだ。
「あの状況では仕方ないでしょ。あの場で無視するほうが不自然な気がしたし」
「じゃあさ、学校でも話しかけたりしていいの?」
「なんの話?」
私がため息まじりに返すと、いつの間にか西崎は私に追いついて隣を歩いていた。
「だから学校で雨宮と話せないことにちょっと……いや、だいぶ前から限界感じてるって意味」
ドクンと、昨日とは違う胸の高鳴り。
「まあ、昔のことは置いといて。今日からすれ違ったり見かけたりしたら声かけるわ」
「まだ許可してないけど」
「お前の許可なんて待ってられねーよ」
たまにこうして強行突破してくることも西崎は変わらない。
変わらないから苦しいこともある、なんてそんな言葉が浮かんできたのは何故だろうか。