きみの好きなところを数えたら朝になった。
「やるわけないでしょ」
ムスッとして返事を返すと、何故か西崎は「そっかー」と軽い返事をして外野のポジションへと戻っていく。
あーあ、どうすんの。
これで確実に西崎とは無関係ではいられなくなったし、周りの友達も「だれ?友達?」と質問しまくっている。
ずっと西崎を避け続けていた私の苦労が一瞬で泡になった気分だ。
そんなことを考えていると桃香ちゃんと目が合って同時に会釈。西崎も西崎で彼女がいるのに私に話しかけたらダメでしょ。
「え、待って待って。いま澪と西崎話してたよね?」
隣でせっちゃんが目を丸くしていた。
当然だ。同中出身でも今日に至るまで学校や人目につく場所では西崎との関わりを遮断してたから。
「どういう心境の変化?」
「……さあ」
自分の返事があまりに他人事のようで可笑しくなった。
心境の変化なんて、きっとない。
西崎は昔からなにも変わらないし、私もそう。
でも本当は変わらなきゃいけなかった。西崎を避け続けている日々の中で、このモヤモヤとする気持ちだけは消さなきゃいけなかった。
なのに、まだある。
あの中学1年の冬に感じた当時の感情のまま。