きみの好きなところを数えたら朝になった。


***


そしてその日の放課後。須藤先輩に今日も一緒に帰ろうと誘われたけど用事があると嘘をついて断ってしまった。

告白の返事も保留のままだし、どんな顔をして先輩に会っていいのか分からなかったから。

家に帰ると西崎はまだいなかった。


お父さんは今日も遅くなるって言ってたし西崎は晩ごはんはどうするんだろう。そもそも一緒に食べると約束したわけじゃないし、私が気にすることじゃないんだけど。

迷った末に私は簡単な焼きそばと野菜スープを作ることにした。

調理時間は15分。あっという間に手抜き料理が完成して、テーブルに並べたところで西崎が帰ってきた。


「ただいまーって、めっちゃいい匂い……!」

まるで犬のように焼きそばを見ていた。

西崎が〝ただいま〟って帰ってくることがまだ慣れない。だから私は一度も〝おかえり〟って言ってあげたことはない。


「今日おじさん遅いんだっけ」

「うん」

「焼きそば俺の分ある?」

「ない」

二文字の返事で成立してしまった会話。私はその間にも腹ペコの西崎を無視して焼きそばを食べ続ける。


「なんか怒ってる?」

「全然」

「あーあれか。昼休みに俺が声かけたから」

「だから怒って……」

言い返そうと顔をあげると、私の視界に白くてふわふわしたものが。

それはつぶらな瞳で見つめてくる愛らしいウサギの抱き枕。

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