きみの好きなところを数えたら朝になった。
「こ、これって……」
あの時ゲームセンターで取れなかったやつ。なんで西崎が……。
「今日岸田とゲーセンに寄ったんだよ。んで、たまたま取れた」
「たまたま……?」
「……いや嘘。けっこう頑張った」
西崎は「ん」と不器用に抱き枕を私に差し出す。私はちょっと考えて、でもそれに手を伸ばすわけでもなく目線を変えた。
「いらない」
まるで拗ねた子どものような口調。
「なんで?欲しかったんじゃねーの?」
「………」
欲しかった。欲しかったけど西崎に取ってと頼んだわけじゃないし、こんなの不意討ちっていうか色々とムカつく。
「……そういうのは彼女にあげなよ」
それこそ彼氏の特権だし、桃香ちゃんこういうの好きそうだからサプライズであげたら喜ぶんじゃないかな。
するとグイッと抱き枕を私の顔に押し付けて西崎は乱暴に椅子に座った。
「うるせー。お前に取ってきたんだよ」
そうふて腐れながらテーブルに置かれた焼きそばのサランラップを外して勝手に食べはじめた。しかもお腹を空かせた犬のように黙々と。