きみの好きなところを数えたら朝になった。
そういえば昔もこんな風に下らない言い合いを毎日してたっけ。西崎とは合うようで合わなくて、趣味も思考も全然違うからぶつかることのほうが多かったけど、それでも最後には笑ってた。
『なんで喧嘩してたんだっけ。つか腹減らね?』と言いながら、西崎が安いなにかを奢ってくれるのが仲直りのパターンだった。
「ねえ、西崎」
なにを言おうとしてるのか分からない。それでも言葉にしようとした〝なにか〟が口先まで溢れでた。
「んー?」と西崎が反応した瞬間、この雰囲気に不釣り合いな明るい音楽がリビングに響いた。
「あ、桃香だ」
西崎がスマホを確認して席をたつ。
電話に出た西崎はすぐに緩い顔をして「あはは」と嬉しそうな声をする。
……分かりやすいね、本当に。
その話し声から遠ざかるように食べ終わった食器を台所に持っていって水の音でかき消した。
暫くして電話を終えた西崎が戻ってきて私に言う。
「なあ、雨宮。明日桃香が遊びにきたいって言ってるんだけど……」
ほら、面倒な約束なんてしなきゃ良かった。