きみの好きなところを数えたら朝になった。
紅茶をティーポットに入れて私は2階へとあがった。そして西崎の部屋がある東側のドアの前に立つ。
コンコンとノックしようとした時、中からの声が外に漏れてきた。
「ちょっと柊也先輩やめてくださいよー」
「いいじゃん、別に」
「もう仕方ないなあ」
楽しそうな笑い声が聞こえたあとで急に無言になる。
……一体なにをしてるのだろうか。見えないぶん色々と想像してしまって、なかなかノックをすることができない。
そもそもここは私の家だし、西崎の本当の部屋じゃないわけだし。私が気を遣う理由も遠慮する理由もないのかもしれない。
だけどドア一枚の壁がものすごく分厚い。それで西崎の部屋だけがまるで他人の家のような気がする。
ここから先は私が入ってはいけない領域で、ふたりに近づけない疎外感のようなものを感じた。
……やっぱり断ればよかった。
今さらそんなことを思っても遅いけど。
――と、その時。「♪♪♪」とポケットの中でスマホが軽快なメロディで鳴り響いた。