きみの好きなところを数えたら朝になった。
たしかに西崎とは世間的から見たら幼なじみかもしれない。保育園も小学校も中学校も高校も一緒。
西崎のことなんて黄色い園服を着て、ひよこ組専用のお散歩カーで一緒に揺られていたぐらいから知ってるけど、それを幼なじみと呼ぶのは止めてほしい。
こんなのはカラオケで「今日は西野カナ縛りねー」と高音も出ないのに無理やり歌わなきゃいけないあの縛りの苦痛と同じだ。
「あー分かるわ。俺もミスチル縛りきついもん」
「いや、カラオケの話じゃなくてさ」
西崎が乗っかりそうな例えをした私も悪いけど、今はその幼なじみという呪縛の話をしてるわけで。
「お父さんはああ言ったけど私は本当に困るから泊まるのは今日だけにしてくれない?」
お父さんはビールを2杯半飲んだあとに酔い潰れて今は布団を敷いて寝かせ終わったところ。
私は自分の部屋に向かって、眠る前にお父さんが使っていいよと言っていた東側の部屋のドアノブを西崎がいま開けるところだ。