きみの好きなところを数えたら朝になった。
学校の周りはほとんど田んぼだらけで、唯一の障害があるとしたら15分に一本通る電車の踏切があるぐらい。
バカな男子たちはペース配分も考えずに最初から全力疾走していて、私たちはのんびりと後方を走っていた。
まだ200メートルぐらいしか走ってないのに脇腹が痛い。……ちゃんとゴールできるのかな、私。
そんな中、ふわりと風に乗ってシャンプーの匂いがして、それは私と同じ香り。
「もうちょい速く走んないと平均タイムヤバいってよ」
それは軽く流すように走る西崎。隣には体育が苦手そうな岸田くんもいて恐らくペースを合わせてあげてるんだろう。
「でも澪の体調が……」
「せっちゃん」
慌てて止めたものの地獄耳の西崎には当然聞こえてしまっていた。
「そういえばお前、朝飯も食わずに元気なかったよな。体調悪いならなんで見学しなかったんだよ」
「……うるさい」
こんなのはただ意地を張ってるだけだって分かってる。でもさ、風邪をひいてて体調不良なら納得できる。
でもあの時のことを思い出して、胸が詰まって眠れなかった、なんて誰にも言えない。
自分でも認めなくない。
だからこんなのは全然平気。ちょっとだけ心が不安定になって弱くなってしまっただけのこと。