私が君にあげたいものは。
ぱっと顔を上げると貴方の、直哉の優しい笑顔。



じわり、と涙が出てくる。



するとせき止めていたものが溢れてきた。



「今日っ、今日ね、記念日あるでしょ?結婚記念日っ。」

「……うん。」

「今日に限って、遅いから……何か、あったのかと。忘れて、どっかに行ってたのかと。
今日、張り切って料理も作ってたのに……忘れられてたら悲しいなって。

私だけしか、覚えてないのかなって、あまりそういうの、興味無いのかなって、
心配で、心配で……」



ほろほろほろほろと流れてくる涙を拭かず。


貴方は抱きしめて頷いてくれる。


すると、泣き終わったあとの一声はこれ。


「もう、春歌はバカなんだから。」


っ、え?
< 10 / 16 >

この作品をシェア

pagetop