ブーケ・リハーサル
【2】眠れない時間
 初出社が終え、家のドアを開けるとため息が出た。それは疲れからではない。段ボール箱の存在にだ。

 転職に伴い引っ越しもしたのだ。前のアパートからだと、今の会社に通うには少し遠かった。それにあの男も前のアパートに何度も来ていた。そんな部屋にもう住んでいるのも嫌だった。ちょうどいいタイミングだったのだ。

 この段ボール箱は土日に一気に片付けよう。必要なものは、箱から出したから日常生活には問題はない。あとは冬服や本など。

 部屋を狭くしてしまっている、段ボール箱を眺めながら服を着替える。シャワーを浴びて、ベッドへと横になった。

 カーテンを閉めていない窓から夜空が見える。コンタクトを外してしまった目では星を見つけることはできない。ただ黒い空を見つめた。

 今日は何時になったら眠れるだろう。また日付を跨ぐのだろうか。

 結婚式に出席した頃から、眠るのが下手になった。前はベッドに潜り込めば、すぐに眠ることができたのに、今は目をつぶっても、なかなか眠りに就くことができなかった。

 ベッドから体を起こし、カーテンを閉め、ライトを消す。そして眠りの体制をとる。なるべく頭の中を空っぽにした。それでもくだらない事ばかり浮かび、さっき見た夜空を思い浮かべる。やっぱり眠ることができず、何度も寝返りを打った。

 結局、眠ることを諦めて目を開ける。白い天井が視界に広がった。
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