ブーケ・リハーサル
「おはよう。高山さんよね。初めまして。社長の第一秘書の松井です。どうぞよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

　松井さんは三十代後半の綺麗な女性だ。黒いスーツをピシッと着こなし、背筋がまっすぐ伸びている。かっこいい人だなと思った。

　その後、佐々木課長、田中さんが来て、秘書課が全員揃った。そして、社長と副社長が来ると、秘書課の空気が一瞬にして変わる。

　全員が一斉に立ち上がった。

「おはようございます」

　社長と副社長は「おはよう」と言いながら、通り過ぎる。社長と副社長は叔父と甥の関係。血縁関係とあって、顔立ちが少し似ている。社長も、渋いイケメンで若いころは副社長に負けないくらいのイケメンだったのだろう、と思った。

「あ、君、新しい秘書の？」

　社長が私の顔を見て、にこやかに言った。

「はい。昨日より副社長の第二秘書として働くこととなりました、高山です。どうぞよろしくお願いいたします」
「よろしく頼むよ」
「はい」

　社長と副社長はそれぞれの部屋に入り、第一秘書である松井さんと田中さんも後を追った。

　私は、今日の副社長の予定、来訪者の確認、メールの確認した。副社長は午前と午後に社内会議があり、昼には会食が入っている。他の日をざっと確認しても、丸一日会社にいるというのはほとんどない。
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