ブーケ・リハーサル
「高山さん」

　田中さんに呼ばれ、パソコン画面から顔を上げた。

「これ、副社長が進めている仕事とその関係者の名前がまとまっています。しっかり目を通しておいてください。あと、来週くらいから高山さんに同行してもらう仕事が増えます。社内での仕事は今週中に理解してください。分からないことは、佐々木課長や私に聞くように」
「わかりました」

　資料を受け取ると、田中さんは副社長室へと戻った。落ち着いていられるのも今週一杯か。そう思いながら、手元の資料をめくった。

　資料は丁寧にまとめられていた。その資料の中に出てくる会社名は大手企業や外資系企業ばかり。時々、中小企業もあるが、その企業も特殊技術を持っているような企業だ。

　日本で有名なメガネ店はと聞かれればrhodon（ロードン）と答える人がほとんどだ。さすがとしか言いようがない。

　資料に一通り目を通し終え、佐々木課長に頼まれた資料の作成に取り掛かった。

　午前の業務を順調に終え、昼食から席に戻ったときだった。鞄の中からマナー音が響いてきた。

　スマホを取り出すと、画面には古賀副社長の文字が。一瞬、ビクッとしたが、軽く息を吐きだしてから電話に出た。

「はい、高山です」
「昼休み中に済まない」
「いえ、もう席に戻っておりますから」
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