ブーケ・リハーサル
「あの、大した用ではないんですけど、これを兄に渡しておいてくれますか?」

 それは持ってきていたトートバックだった。さほど重たくもない。

「かしこまりました。お預かりいたします」
「忙しいのにこんなこと頼んですみません。兄に直接渡せばいいんですけど、マンションに行っても仕事でほとんどいないし、どこかで待ち合わせしても仕事でキャンセルされるから。会社に直接行っちゃうのが確実で」
「そうですよね、お忙しい方ですから」
「うん」

 樹里さんはアイスティーを飲み、お菓子に手を伸ばした。

「高山さんって、どんな人がタイプ?」
「え、あの」
「お菓子食べ終わったらすぐに帰りますから、ちょっとだけ私に付き合ってください」

 副社長の妹とういだけあって、可愛らしい顔をしている。目がクリっとしていて、少しリスに似ている。そんな子に笑顔で言われれば断れない。

「私で良ければ。好きな人のタイプですよね。誠実な人がいいですね」
「なにそれ。いかにも表向き用の答えじゃない?」
「そんなことないですよ。最近、すごく不誠実な男性と別れたばかりなので」
「えっ、不誠実ってどんなことをしたの、元カレさん?」
「内緒です」
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