ブーケ・リハーサル
テレビのボリュームが大きすぎたのか。会話しているとき、ずっとこの音が聞こえていたのだろうか。副社長からすれば雑音かもしれない。だから恐る恐る聞いてみた。
「はい。音、うるさかったですか?」
『いや、もしかしてブラック・スタート?』
「はい、そうですけど」
『俺も観てるんだ、それ』と副社長は弾んだ声で言った。
『冒頭の十分を見そこなって分からないところがあるんだ。主人公の弟はなんで死んじゃったの?』
「あの、死者を蘇らせるための儀式に必要な血液を提供したからです。弟は自ら志願して体内の血液を全て渡して。それが死因です」
『そっか。じゃあ、その血液を使って蘇った死者は誰?』
「主人公の恋人の母親です」
『やっぱり、そうか。見ていてなんとなくそうだろうなと思っていたんだけど。ありがとう。気になってたことがすっきりし、えっ』
副社長の言葉が途切れた。私も同じタイミングで「えっ」と言った。
「あの、弟生きてますね」
『うん、あれ弟だよね』
「はい、弟です」
テレビでは死んだはずの弟が兄の前に現れている。そのうえエンドロールが始まった。
『終わっちゃったけど』と副社長が気の抜けた声で言い、私も「終わっちゃいましたね」と言った。
「はい。音、うるさかったですか?」
『いや、もしかしてブラック・スタート?』
「はい、そうですけど」
『俺も観てるんだ、それ』と副社長は弾んだ声で言った。
『冒頭の十分を見そこなって分からないところがあるんだ。主人公の弟はなんで死んじゃったの?』
「あの、死者を蘇らせるための儀式に必要な血液を提供したからです。弟は自ら志願して体内の血液を全て渡して。それが死因です」
『そっか。じゃあ、その血液を使って蘇った死者は誰?』
「主人公の恋人の母親です」
『やっぱり、そうか。見ていてなんとなくそうだろうなと思っていたんだけど。ありがとう。気になってたことがすっきりし、えっ』
副社長の言葉が途切れた。私も同じタイミングで「えっ」と言った。
「あの、弟生きてますね」
『うん、あれ弟だよね』
「はい、弟です」
テレビでは死んだはずの弟が兄の前に現れている。そのうえエンドロールが始まった。
『終わっちゃったけど』と副社長が気の抜けた声で言い、私も「終わっちゃいましたね」と言った。