ブーケ・リハーサル
「そうなんですか」
「希望していた職種ではありませんが、一緒に働いていただけますか?」と、佐々木課長は少し申し訳なさそうな顔で言った。

 びっくりはしているが、これも会社員の宿命だと思う。ここで断って、また新しい就職先を探す気もない。これはきっとチャンスだ、そう思った。

「はい。秘書という仕事は初めてですので、ご迷惑をお掛けすることあると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」
「そう言ってもらえて安心しました。こちらこそ、よろしくお願いします」

 では、と言って、佐々木課長は仕事の説明を始めた。

 第二秘書の役目は簡単に言えば第一秘書の秘書という感じだった。社内での電話番。来客の接遇。必要な書類の作成。スケジュールの管理。副社長宛の手紙の確認とその返信。また、パートナーの同伴が必要なパーティーへの出席。他にも細かいことがいろいろあるらしいが、それは仕事をしながら追々覚えていってほしいと言われた。

「あの、パーティーって、頻繁にあるんですか?」
「パートナー同伴のようなパーティーは滅多にありませんよ。バートナー同伴の必要がないものでも、出席するようにと言われた場合は、高山さんにも出席していただきます。今のところ、パーティーの予定はありませんので心配いりません。パーティーなんて年に数回あればいいところですから」
「はい」
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