ONLY YOU~愛さずにはいられない~(完)
「変身って・・・」

「行くよ、璃愛」

彼が先に立ちあがり、椅子の背もたれに掛けていたトレンチコートを左手に持ち、右手を私に差し出した。

私も反射的に手を差し出す。
彼の手が私の手を握った。

「嫌いな男に触れられるのは嫌かもしれないけど。女優はそうは言ってられないよ、璃愛」

その甘い声は反則だ。名前を呼ばれる度、鼓動が高まる。
私はヒロインを演じるのは最初から合わない気がするけど、彼の見合いをぶち壊した手前、仕方がない。

彼の好むタイプの女性になろう。
私は彼と二人でタクシーに乗り込んで、代官山の美容院に向かった。

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