あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
「…つき」
誰かが名前を呼んでいる。
気持ち良く眠っているのに。
「皐月!!」
「!」
耳元で叫ばれ、重たい瞼がやっと開いた。
「神戸…」
「皐月ん家の近くまで来たけど、どうする?家までにする?」
「あれ…神戸の家が先じゃ…」
「こんな酔っ払い、運転手さんに迷惑かけられないでしょ?だから、先に皐月を送ってこうと思って」
「すいません…」
神戸の気迫につい謝ってしまった。
「じゃあ、これタクシー代」
ポケットから財布を出した。
「いいわよ」
「いや、迷惑かけたからさ」
タクシーを降りて、神戸にお金を渡そうとした時だったー…
「皐月お兄ちゃん?」
背後から呼ばれた。
この呼び方、この声ー…
「…夏帆」
制服姿の夏帆が立っていた。