あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~


「…つき」

誰かが名前を呼んでいる。


気持ち良く眠っているのに。

「皐月!!」

「!」

耳元で叫ばれ、重たい瞼がやっと開いた。

「神戸…」

「皐月ん家の近くまで来たけど、どうする?家までにする?」

「あれ…神戸の家が先じゃ…」

「こんな酔っ払い、運転手さんに迷惑かけられないでしょ?だから、先に皐月を送ってこうと思って」

「すいません…」

神戸の気迫につい謝ってしまった。

「じゃあ、これタクシー代」

ポケットから財布を出した。

「いいわよ」

「いや、迷惑かけたからさ」

タクシーを降りて、神戸にお金を渡そうとした時だったー…



「皐月お兄ちゃん?」


背後から呼ばれた。



この呼び方、この声ー…



「…夏帆」


制服姿の夏帆が立っていた。









< 12 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop