あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
「こんな時間に何してんだ?」
「塾の帰りだよ。皐月お兄ちゃんこそ…」
夏帆はチラッと神戸を見た。
「皐月に妹っていたっけ?」
神戸は驚いた顔をしている。
「え…あー…近所の子供だよ。じゃあ、ありがとな。気をつけて」
逃げるようにタクシーのドアを閉めた。
神戸がまだ言いたそうな顔をしていたが、それは無視した。
「私、もう子供じゃないよ」
ムスッとした夏帆と目が合った。
「…子供だよ。送るから、帰ろう」
「子供じゃないもん!来年受験だし、やっと高校生になれるんだよ!」
ムキになって怒っている姿は、出会った時と変わらない。
「ふ…高校生も子供だよ」
思わず笑ってしまった。
それが気に食わなかったのか、夏帆は立ち止まってしまった。
笑ったのはまずかったかー…
「夏帆、置いてくぞ」
「…皐月お兄ちゃんはさっきのお姉さんみたいな人が好きなの?」
「…は?」
突然何を言い出すー…
「さっきの人、綺麗な人だった。だから、綺麗な女の人が好きなの?」
神戸のことか…確かに、大学の時と比べてさらに綺麗になったか?
でも、俺はー…
俯いている夏帆を見た。
いやいや…俺はー…
「私…皐月お兄ちゃんがいる高校に入学したくて今、勉強頑張ってる」
「そっか。頑張れよ」
「後、もう一つ頑張ることできた」
「…勉強以外にか?」
何だ?
「さっきの人みたい綺麗になる。それで、皐月お兄ちゃんと結婚する」
「…」
え!!???