あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
俺は夏帆の笑顔に癒されていたはずだった。
それなのに今はー…
「皐月お兄ちゃん!私、明日受験なの!!合格するように祈っててよ」
休みの日に家に遊びに来た、夏帆。
「…あぁ。でも、合格したいならここで遊んでる場合じゃないぞ」
「息抜きで来たんだもん…後、合格すればやっと皐月お兄ちゃんの生徒になれるんだって思うと、緊張じゃないドキドキで落ち着かなくて」
受験前だというのに、満面の笑みで話す夏帆。
「…まずは、受験のことだけ考えろ」
そんな夏帆を俺は、直視できない。
観たくもないテレビを観ながら言った。
「わかってるよ…じゃあ、もう帰るね」
「気をつけてな」
半分拗ねたような言い方をして、夏帆は帰って行った。
何も知らない、夏帆。
俺は夏帆との約束を守れていないのに、あんなに嬉しそうにー…
ズキン。
「…俺はひどい教師だ…人としても…」
夏帆が合格したら、今よりもずっと一緒の時間を過ごすことになる。
その前に、神戸とのことを伝えないといけない。
その時、夏帆はどんな顔をするのだろうかー…