あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
見つめる目
「神戸だろ…俺を推薦したの」
辞令が出た日の夜、神戸に連絡をして会うことになった。
「推薦はしたけど、皐月の評価も良かったのよ。うちの学校に必要な人材だからぜひって話になって、異動の話が出たの」
「…本当かよ」
グラスに入ったビールを、ヤケ酒かのように一気飲みする。
夏帆と違う学校になってホッとしていたのに、俺の異動で同じ学校になるとはー…
夏帆は絶対、満面の笑みで喜ぶ。
けど、その笑顔を見る前にー…
「ねぇ、皐月。今日はいいでしょ?明日休みだし」
神戸の手が二の腕に触れた。
甘い香りが鼻に香る。
「うちに泊まってって」
神戸が言いたいことはわかる。
いい大人が付き合っていて、うちに泊まれって言われたらもちろんー…
「いや…仕事が残ってるんだ。明日も学校行かないとー…」
何故か¨行く¨とは、言えない。
「ねぇ、私たち付き合ってるんだよね」
理由をつけて断ってしまう。
「皐月!」
あぁ、付き合っている。
神戸と。
けどー…
目を閉じると、今も夏帆の顔しか見えないんだ。