あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
神戸のことも気になるが、今は夏帆だ。
入学式早々にこんな目立つことして、これからの高校生活が大丈夫なのか…
「お…お前ら何してんだ!!??」
田島先生の大きな声に驚いた。
「入学式を抜け出してこんなとこで何してんだー!!??」
そんなに怒鳴らなくても…と思っていたが、目の前の光景に目が点になった。
「ちっ…見つかったか」
舌打ちした寺田の制服のシャツのボタンは全開に開いていて、夏帆と密着している。
「…っ」
拳を強く握りしめる。
ここで何してたんだ?
夏帆に何したー?
「有岡先生!」
「あ…はい!」
名前を呼ばれ、ハッとした。
「平の方は、有岡先生にお願いします。厳しく指導してくださいよ!!」
「はい」
田島先生たちは寺田を連れて、校舎の中へと向かった。
「…とりあえず、教室行く前に生徒指導室な」
さっきから一言も喋らない、夏帆。
寺田に何かされたのか?
そんなことを考えると、また拳を強く握ってしまう。
…って、俺は今はそういことで怒りの感情を出しちゃいけない。
生徒指導としてー…
「平、行くぞ」
先に歩き出すと、夏帆は俯いたまま後を付いてくる。
大丈夫か?