あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
「…神戸先生とお幸せに」
ポツリと言った夏帆の言葉に耳を疑った。
今、お幸せにってー…
目の前にいる夏帆を見ると、涙を堪えているみたいだが、流れ落ちる涙は止まらない。
「¨お幸せに¨か…もっと、ダダこねると思っていたのに。いつの間にか大人になっていたんだな」
まさか、夏帆からそんな言葉が出るとは思っていなかった。
あの日の涙といい、本当に成長が速い。
「残念だが、俺はまだ幸せになれないみたいだ」
そっぽを向いたままの夏帆。
「お前が高校生の間は幸せどころか、一歩間違えればどん底だ」
そう言うと、やっと夏帆と目が合った。
「卒業するまでに俺を振り向かせるぐらい、良い女になってくれるんだろ?」
そこまで言うとやっと理解したみたいで、夏帆の表情が変わっていく。
「…うん!!!!」
満面の笑みで元気よく返事をした夏帆。
久しぶりに見たような気がする。