あなたしか愛せない~皐月お兄ちゃん編~
複雑な想い
「…疲れたー」
教師になって3年。
毎日毎日、ハードすぎるだろ
生徒は生意気だし、保護者には気を遣うし、勤務時間は長いし。
「…」
俺、何で教師になったんだっけ?
そんなことを考えながら、自宅に向かって歩いているとー…
「皐月お兄ちゃん!!」
背後から元気な声で呼ばれた。
振り返ると、そこにいたのは夏帆だった。
「おう。学校帰りか?」
「うん!今日委員会があってね、遅くなっちゃったの」
嬉しそうにニコニコ話す夏帆に、心が癒される。
「夏帆も中学生か…早いな」
セーラー服を着て、出会った時よりも身長も伸びた。
「¨まだ中学生¨だよ。早く、皐月お兄ちゃんの生徒になりたいのに」
…あぁ。そっか。
「皐月お兄ちゃんを先生って呼ぶの楽しみにしてるんだー!!だから、勉強も頑張るの!!」
出会った時と変わらない無邪気な笑顔。
俺は、夏帆に背中を押されたんだ。
俺よりもずっとずっと、教師である俺を好きなんだ。
「頑張れよ。俺が今の高校よりも偏差値が高い学校に赴任したら、大変だからな」
「えー!?それはダメ!無理!!」
「ははは」
ほんと、夏帆には救われる。