ずっと前にね
二人の睨み合いはしばらく続いた。龍人くんはギターを背負って立ったまま、柏崎先生は私の隣に置いてあった椅子に座ったまま。
話し掛けてはいけない。少し動いただけでも怒られてしまいそうな。動きたくても動けないくらい、ピリピリした空気が二人を見ていた私も包み込んできた。

「あの・・・?」

戸惑う私に気付いた龍人くんが、困ったような切ない表情で私を見つめる。どうしてそんな表情を私に向けてくれたのかはよく分からない。けれど、分かった事が一つだけあった。

「島ちゃんの気持ち、弄んでんじゃねぇよ」

龍人くんと柏崎先生の仲を悪くしていたのは私なのかもしれない。はっきりしない、告白する勇気の出ない私のせいで龍人くんに柏崎先生の悪い印象を根付けてしまったんだ。
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