ずっと前にね

考えすぎだ

他の生徒たちも集まってきていたから俺は紛れて教室を出たけれど、俺が見えなくなった後もあいつはきっと俺を睨んでいたと思う。彼女が高校を卒業し、堂々と二人で会えるようになってから突っ掛かってくるようになったんだ。
最初に口を挟まれたのはゴールデンウィーク辺りだったかな。今日みたいに教え方の相談を受けたり、他愛のない話をしていた時だった。生徒たちが来たんで俺も自分の部屋に戻ろうとすると、後を追って声をかけてきたんだ。

「あの、島ちゃんの彼氏か何かですか」

彼氏でも何でもない俺は、もちろん違うと答えたさ。でも、彼氏になりたいと思っている友達だって。そうすると、あいつは眉間にシワを寄せて目付きを鋭くした。そして、ふーんとだけ言って去っていったんだ。
噂によれば、あいつの母親は観光客と駆け落ちして置いていかれたばかりらしい。だから、千里の事を母親と重ねて見ているから面白くないのだと思っていた。
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