ずっと前にね
酷い時はスイッチの入ったばかりのオーブンや強の設定にした冷蔵庫に閉じ込められる事も何度かあった。でも、その度に父さんは帰ってきてくれて病院に運んでくれた。父さんだけは俺の味方で、不細工な俺でも母さんと仲良くなれる方法を考えてくれているんだと思っていた。
現実はそうじゃなかった。俺は母親に優しく笑いながら頭を撫でられる事はなかった。一度も目を合わせてくれなかった。そのまま、なにもしてくれないまま母親は離婚して出ていった。父親の職場の、下心しか持っていない人とこの町を出ていったんだ。
面白半分で近付いてくる人、そんな母親の子供だからとこそこそと悪く言う人。色んな人が俺を見ては笑ってきた。触れてくれる事はなかった。

「危ない!」

そんな時だった。父親にすら触られた事がなかった俺の手を握り締め、抱き締めてくれた人がいた。それが、ギターの講師である島ちゃんだ。
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