ずっと前にね

現実だよな

朝起きると知らない部屋のベッドの上に一人で横になっていた。千里と踊った後の記憶はうっすらとしかないが、吐き気も頭痛もないし二日酔いにはなっていないらしい。
ふっと体を起こし、寝ちまったのかとあくびをしながら腕や背中を伸ばしていた。すると、少し離れたソファにドレスのままで眠っている千里を見付けてしまった。
あまりの美しさに頭が真っ白になった。何でここにいるのか、どうして同じ部屋で寝る事になってしまったのか。何も把握できないまま、昨日をさかのぼって理由を知ろうとした。
経緯を知るのに必死だった。まさか、自分が連れ込んで変な事をしてしまったんじゃないかと幻滅してしまいそうになっていたからだ。

「起きたかー？飯だぞー」

屋敷の主人、古川がノックもせずに扉を開けて顔を覗かせた。ノックくらいしろと文句を言ってやりたかったが、この状況になった経緯を知っているかもしれない。