ずっと前にね
「なぁ、なんで千里がここにいるんだ?」

借りていたタキシードを脱ぎ、私服に着替えながら古川にそう聞くときょとんとした顔をされた。あれ、違ったのかというような誤解が解けたような表情だった。俺はそんな古川の表情を見てさらに訳が分からなくなった。

「お前ら、恋人か何かじゃなかったのか?てっきりそう思って・・・」

悪い事をしてしまったというように後頭部に片手を回し、申し訳なさそうにする古川。なんだ、そういう事か。確かに千里は俺以外とはあまり喋らないみたいだし、そんな関係だと思われても仕方ないよな。でもな、それは俺が憧れている関係であって実際には友達なのかすら分かっていない微妙な関係だからな。
俺が何かした訳じゃない事に安心した。けれど、安心したのも束の間の話。古川の次の言葉に俺は怒りを抑える事が出来なかった。そんな言葉、冗談でも彼女の前で言っちゃいけないんだ。
< 152 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop