ずっと前にね
一人であるのなら、さっきの生徒たちについていけば良かったのではないか。痛い質問をされる気がして、どうやって返答しようか悩んでいた時だった。

「あの、その・・・。なんで私を千里と呼ぶのですか・・・？」

不意を突かれた質問に俺は思わず彼女の方へ振り向いてしまった。自分では無意識だったのだが、彼女の親が再婚する前の苗字が千里であったために癖で千里と呼んでしまっていたのだ。
ただ、振り向いてしまった時に彼女と目が合って事件は起きた。それだけ、ただ目が合っただけで俺の鼓動は速まった。苦しいほどバクバクと音を立て、ストーブの目の前にいるかのように顔が熱くなったんだ。
この感情が恋であるという事は分かっていた。でも、教師と生徒という垣根があるために気のせいであると言い聞かせていたんだ。問題になって職を失うのも、そのせいで彼女が生きづらくなるのも嫌だったから。なのに不意を突かれてときめいてしまった。
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