ずっと前にね

最悪だ

あぁ、夢。夢だったのか。悲しいような嬉しいような複雑な気持ちになっていた。やっと思いを伝えられたと思ったのに、違ったんだ。俺を受け入れてくれたのだと思ったのに違ったんだ。
意識がもうろうとした中で起きた事だったから現実味があっただけなんだ。千里も抱き締められただけだと言っているし、俺の勘違いだったんだ。

「悪い。怖かったよな・・・」

月明かりに照らされた千里の顔が切なく見えるのはなぜだろう。悲しんでいるように見えるのは俺がそうであってほしいと願っているからなのか。

「気にしないでください。大丈夫ですから」

なぜだろう。彼女の笑った顔も言葉も信じられない。無理をして嘘を吐いているようにしか思えない。やっぱり怖かったんだ。傷付けてしまったんだ。何やってんだよ、俺。
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