ずっと前にね

再会してからずっと柏崎先生だったんだよ。今さら変えろと言われても簡単には変えられないよ。だって、いくら恋人と言っても恥ずかしいじゃない。下の名前で呼ぶのなんてさ。

「ずるいです・・・」

落ち込む私に先生はまた手を乗せて頭を撫でてきた。笑い声が車の中に響いて、私も笑わせようとしてくる。先生の声ってどうしてこんなに影響力があるんだろう。

「まぁ、すぐにとは言わねぇさ。昼ご飯、これで良いか？」

広い丘の上に車を止めると柏崎先生はコンビニの袋を私に見せてくれた。いつ買ってきたんだろう。そんな事を思いながら頷いて私も車の外へ出た。
あの町も充分空気が美味しいけれど、丘の上も負けないほど新鮮で美味しい空気が味わえた。そして、丘の上なら気になってしまう強風も今日は全くと言って良いほど吹いていなかった。