ずっと前にね
何て断ろうか考えていた。ただごめんなさい、弾けませんと言えばこのまま唯野くんと仲良くなれない。普通に教室へ登校して昔のように皆と仲良く過ごしたい私にとって、唯野くんから嫌われないようになるのは大きな進歩。共通の話題も出来るしクラスに馴染めるきっかけになるかもしれない。
ただ、弾けるという事実は話したくなかった。弾けるという言葉を発しただけで、この輪の中に無理に入れられそうな気がした。だから、言いたくなかった。

「島岡は曲の完成度を上げるためにお前らのサポートに回ってんだ。仕事増やすなよ」

困っていると、柏崎先生が助けてくれる。そんな概念が私に染み付いて来ているのかな。どうしたら良いのか分からないと柏崎先生の目を見るようになっていた。
ただでさえ、仕事の合間を縫って聞かなくても良い愚痴を聞いてもらっている。それなのに学校でも頼ってしまっては迷惑なんだろうな。
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