ずっと前にね
四章・学校祭

無理すんな

病院にいた。千里が俺の姿を見付けるなり意識を失って倒れたんだ。救急車には俺が同乗し、担任には家族へ連絡してもらった。
俺たちの出番は午後のトリだし、倒れてしまったのが高校に来てすぐ。だから、千里が出たいのであれば出られる時間は充分あった。

「夢華!」

「落ち着いてください。眠っているだけですから」

千里の祖父母、両親、兄弟。全員で病室に入ってきたけれど千里はまだ眠っている。いや、眠っているふりをしているんだ。家族の顔を見たくないらしい。

「あの、夢華に・・・。孫に何があったのですか」

祖父が千里に何が起こったのかと俺の姉である看護師に訊いてくる。しかし、両親や兄弟は興味すら無いらしい。
< 61 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop