ずっと前にね
柏崎先生に背中を押されて一歩前に出てしまったけれど、私はマドンナって言われるほど素敵な人なんかじゃない。むしろ真逆でマドンナとはかけ離れているくらい汚れて最悪な人。柏崎先生の思い込みだよ。

「行ってこい」

なんで私が。そう思って柏崎先生の方を振り向くと、そう言ってくれているような気がした。ステージの前にいる皆からはいいぞとか、口笛や拍手などが固まっている私に送られてきていた。

「おい?夢?」

珍しく戸惑っているたけちゃん。少しだけ口許が緩んで、把握できていない私を面白がっているような笑顔を向けている陽翔くん。ニコッと可愛らしい、満面の笑みを向けてくれている叶多くん。子供みたいとでも思ったのか、優しく笑ってくれている隼人くん。皆、私を待っていてくれている。早く皆で音楽を奏でようって誘ってくれている。
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